おしきみ講座


おしきみの歴史

シキミ科・常緑高木。別名=ハナノキ・仏前草。本州の東海以南、四国、九州、琉球に自生。台湾、韓国の済州島、中国に分布。

日本では「悪しき実」と呼ばれ果実に毒があり、厄除け、魔よけに使われていました。仏壇や墓所に「おしきみ」をあげるのは、悪い虫やケモノを追い払うだけでなく、魔がたたらないようにする意味も含まれています。シキミは「悪しき実」の「悪」が略されたことによりつけられた名称です。


長持ちさせるコツ

新芽の季節になると、お客様より「長持ちさせるコツは?」とのご質問をよく受けます。
ここで何点かご紹介致します。

新鮮な水

何と言っても水が大切。できる事なら、毎日、新鮮な水に変えてあげましょう

②水の量
新芽のため、多めに水をあげたくなってしまいます。しかし、自然の中では、毎日雨が降るわけではありませんし、雨が降っても土壌が適切な湿度を保ってくれます。家庭では、水が多すぎると、おしきみが水を吸い過ぎてしまい、新芽が曲がったり、根が腐ってしまったりします。毎日、少なめの新鮮な水をあげるのがベストです。なかなか手間がかかりますが・・・

殺菌
鮮度が落ちる理由の多くは、根に付く雑菌が原因です。特に夏場には、根に白いドロドロとしたものが付いた経験はございませんか?おしきみの根は「水根」と呼ばれ細い根毛が多く付いていますので雑菌が繁殖しやすくなっています。特に根付きしシキミは、切花に比べて土の中の雑菌が多くいます。一般家庭の花瓶では、家庭用の漂白剤を数滴入れるだけで殺菌作用があります。

環境
どんなに水が新鮮でも、やはり新芽は弱いものです。直射日光と風を避けて可愛がって下さい。

新芽が出る。手間がかかる。個体差がある。色々と世話がやける「おしきみ」ですが、生きているから仕方がない事です。枯れてしまうのも生きている証拠です。生産者の方々が真心込めて育てた「おしきみ」です。楽しみながら、たくさん可愛がって下さい!



おしきみの種類(根付き)

「おしきみ」と言っても、葉の大きさや細さ、ボリューム、色、千差万別です。
これは、種類の違いなのでしょうか?

同じ畑で、同じ育て方をしても、全く同じ「おしきみ」を生産する事はできません。根付きしきみは、種から3年間かけて育て上げます。実は、種を取った木と同じ性格の根付きが出来る事がほとんどです。この種の種類も大切ですが、3年間の天候にも大きく影響されます。主な生産地である富士方面では、シキミ栽培に最適な静岡の気候を生かし、永い年月をかけて、種の選別、芽摘み・肥料のタイミング、農薬の種類、土壌改良など、栽培技術を日々研究し、卓越した技術で最高品質の根付きシキミ・枝シキミを育て上げます。

中でも特徴的な「おしきみ」をご紹介致します。

これは、一般的な「おしきみ」です。

 

こちらは、葉が細く茂った「おしきみ」です。

  

比べて見ると、差が良く解りますね。実は、この2本、同じ畑で栽培されたものです。



お客様によって「葉が細かい方が好き!」「葉が細か過ぎるとシキミじゃない!」などと、好みが分かれます・・・。


こちらは、ボリュームのあるボッサリとした「おしきみ」です

  


こちらは、背の高いスリムな「おしきみ」です。

  

比べて見ると差が良く解ります。この2本も同じ畑で栽培されたものです。



こちらは、新芽の出が早いものと遅いものです。



この様に、同じ畑で同じ育て方でも性格の差が大きく出る事があります。
でも、全て「しきみ」です。種類の違いと言うより性格の違いですね。人間と同じです。

しかし、生産者の皆様は、苗の小さな時にシキミの性格を見抜き、独自の知識と経験で高品質のシキミに育て上げます。それぞれの生産者によって、「極秘」?の育て方があるのです!

当店では、多くの契約農家と相談しながら、芽摘みのタイミングをずらしたり、標高差を利用して出荷場所を変えるなど、その季節で一番良い「おしきみ」の安定出荷を心がけています。


切り枝の種類

「おしきみの種類(根付き)」でも紹介しましたが、切り枝にも色々な性格があります。ここでは、大きく環境の違いがある「山しきみ」と「栽培しきみ」をご紹介します。

【山しきみ】

自然の山に群生している「おしきみ」です。場所によっては、山のほとんどがシキミで覆い尽くされている場所もあります。自然の山では、風通しの良い場所になると強風で葉が破れたり、傷だらけになってしまいます。そのような場所は、その周辺一帯のシキミ全てが商品になりません。逆に、斜面の方角や谷の進行方向などでシキミに適した場所があると、周辺一帯全てが出荷できるシキミの楽園になります。
 当店も、開業当時は、山にシキミを収穫に行き、軽トラックで東京のお客様までお届けしていたそうです。

十数年前、新芽が固まった5月末に「ヒョウ」が降って根付きシキミに大きな被害が出ました。根付きシキミの出荷が間に合わず、父と2人で「山しきみ」を収穫しに行った事があります。山まで車で2時間。さらに、足場が悪くて急な登り坂の山道(ほとんど獣道)を2時間歩いて収穫。帰りは80kgのシキミを背負って帰る。途中、鹿やイノシシにも遭遇。今では良い経験ができたと思いますが、当時は本当に大変でした。

良い場所があればいいのですが、安定した出荷ができず、大変な仕事の為、後継者不足も深刻で、静岡では一部の地域を除いて、あまり見かけなくなってしまいました。

個人的には、葉のバリバリ感とか、色の深さなど、すごく好きなシキミですが、新芽の季節に出荷出来なかったり、目が届き難く管理が難しいのが残念です・・


写真は「山しきみ」。右は新芽に栄養が取られて下の葉が垂れてしまった写真です。

 


【栽培しきみ】

「山しきみと」は対照的に、その名の通り畑で栽培されているシキミです。最大の利点は、目が行き届き、十分な管理ができる点です。山では困難な、農薬や肥料の散布から、芽摘み、土壌管理まで十分に行う事ができます。
その反面で、経費も増します。春~秋には、虫が着かないように10日~20日に1回、農薬散布を行います。1回の散布で○○万円の経費がかかる農家もあります。本来、魔除け、虫除けに使われていたのですが、本当は虫に弱いんです・・・。
より良いシキミが生産できる様に、様々な工夫と経験を活かし頑張っています!


当店自家栽培の畑です。



右)写真の様に、成長の速さも個性があります。

   

少し解り難いのですが、写真のように曲がってしまう性格のシミキもあります。何年経っても、真っ直ぐ伸びる事はありません。生まれ持った性格です。




管理がしやすいので、標高差を利用して新芽の状態が良い畑から出荷が出来ます。また、新芽が出ても肥料散布が可能なので、下の葉まで元気です。



天候にもよりますが、10月~1月頃には写真のように素晴らしい「おしきみ」が揃います。


おしきみ講座」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: シキミのこと – 青蓮山法眼寺

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